亡くなった母がいつも見せてくれた優しい眼差し…
とは言ってもネットには疎く、どうすれば良いのだろうと思いつつも、酷く落ち込んでいた様子のお隣りさんが見せてくれた笑顔、「この人の為にも」と思わずにはいられませんでした。
取りあえず、地元の心当たりに電話を入れてみましたが、やはり、直ぐに良い返事をもらえる人も無く、息子(おばあちゃんから孫にあたる)に、ネットでの里親さん探しを頼んでみると
「マルは雑種でしょ?難しいと思うよ。それより、家で引き取れないの?」
「雑種は難しいの?雑種なのかな?父さんも良くわからないけど、マルはとてもお利口さんだし、それに真っ白で格好いいけどなぁ」
「ペットショップにはいない犬だよね…。ねぇ、飼っちゃ駄目なの」
「家で引き取りたいのは山々なんだけど、この前も猫を飼いたい人がいて、マンションの会合でお願いしていたけど、何が何でも最初に駄目って決めていたから、駄目だっていう人がいて…。それも鳴き声がうるさいからって、無く猫じゃないからって言っても聞かなくて。犬は完全に無理だと思うよ」
「僕が頼んでみるよ」
「それは…。でも、その時は父さんが頼むから…
でも、マルはこんな自然がいっぱいで、生き生き暮らせていたのに、都会のマンションに閉じ込めたら、可哀想な気もするし、もう少しこっちで探してみるよ」
「じゃあ、どうやって探すの?」
「やっぱりネットは駄目なのかな?」
「一応、僕のSNSであたってみるけど、自信はないよ、それに、この辺りの人が見つかるかどうか…。」
「ありがとう、父さんは地元の愛護センターに聞いてみるから」
「愛護センターって、さっき隣のおばさんが、所長が怒っているって言ってたところ?父さんも怒られるんじゃないの」
「聞くだけ聞いてみるよ、名前が愛護だし、国や県でやっているだから。それに、引き取り手の探し方を教えてくれるかも」
愛護センターに電話を入れてみると丁寧に教えてくれましたが
「先ず、自分で引き取り手を探して下さい。どうしても引き取り手がいない時にこちらにお越し下さい。基本的に飼い主の都合での引取りは行っておりませんが、飼い主が亡くなられたのであればお引き受け致します」
心当たりを当たっても駄目だった時の事を聞くと、犬の保護団体さんを2ヵ所教えてくれました。
電話を入れてみると
「こちらでは、純血の犬しか保護していないので、申し訳ございません」
「純血種とは?」
純血種って説明を聞いてもよくわかりませんでしたが、タロは該当しないようで駄目でした。純血というならば、最近も色々な犬種が生まれる中で、タロはこの地方の犬で、もっと純血のように思えますが…。保護犬といっても、里親になってくれる人は、人気の犬種に拘る人も多くてとの事でした。
気を取り直して、次を当たってみると
「一般の方の飼い犬の引取りは致しておりません」
「どうすればよろしいのですか?」
「愛護センターから、引取りますので一度、預けていただいて」
「愛護センターの方から教えていただいたのですが?」
「たぶん、愛護センターで引きとった後の事をおっしゃったのではないでしょうか」
「そうですか、もう一度確認してみます」
その日は、時間が押してしまい、愛護センターは閉まっていました。
後片付けを任せてしまった妻や妹に
「ごめん、ごめん、マルのこれからが決まらなくて…」
「私こそ、ごめんね、私が引き取れれば良いのだけど」
「しょうがないよ、夜勤もあるし、救急の仕事は時間が不規則だからタロも可哀想だよ」
「地元の友達にも当たってみたけど、やっぱり、急には難しいって」
「でも、大丈夫だよ。もしもの時は俺が見るから」
「お兄ちゃんのマンションもペット禁止でしょ」
「いいんだよ。ペットじゃないよ。母さんの大切な家族だから」
「無理しないでね」
とは言ったものの、マンションの件は、一切、人の言葉に耳を貸してくれない住民の顔を思い浮かべると、とてつもない壁を感じていました。
ふと、視線を下すとそんな私をマルが優しいまなざしで見ているのに気が付きました。
それは、亡くなった母がいつも見せてくれた優しい眼差し…
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